
「市街化調整区域なのに、ここに倉庫があるのはなぜ?」
埼玉県で貸倉庫を探していると、こういう疑問を持つ方は少なくありません。
川口市の安行周辺、八潮市や三郷市、所沢市南永井、川越市、狭山市などを車で走っていると、農地の中に倉庫が建っていたり、住宅地の外れに大きな工場があったりします。
「調整区域なのに、どうして建物があるの?」と思いますよね。
ただし、ここは一つ注意してください。
倉庫が建っているからといって、誰でも自由に借りて使えるとは限りません。
市街化調整区域に倉庫がある理由は、建物が建てられた時期や目的、受けている許可によって変わります。
しかも、埼玉県内でも地域によって事情がかなり違います。
今回は、埼玉県内の倉庫を実際に見てきた立場から、なぜ調整区域に倉庫があるのか、そして借りる前にどこを見るべきなのかを整理してみます。
🏭 市街化調整区域に倉庫が建っている理由
まず、調整区域に倉庫がある理由を大きく分けると、次のようになります。
・市街化調整区域に指定される前から建物があった
・農家が農業用の倉庫として建てた
・開発許可や建築に関する許可を受けて建てた
・許可を受けた既存建物を、決められた範囲で使っている
このどれに当たるのかは、外観を見ただけではわかりません。
古い倉庫だからダメ、新しい倉庫だから大丈夫、という単純な話でもありません。
建物が建った経緯と、現在の使われ方が合っているか。ここが大事です。
📍 埼玉県内でも、調整区域の性格は地域で違う
埼玉県内の調整区域を、全部まとめて「倉庫が多い地域」と考えるのは少し乱暴です。
農地や茶畑が中心の場所もありますし、幹線道路沿いで倉庫や工場が集まっている場所もあります。
市街化調整区域があるかどうかよりも、実際にどのような土地利用がされているかを見る必要があります。
川口市安行周辺
川口市の安行周辺は、農地や緑地、住宅地が入り混じっている地域です。
川口市では、安行神根地区と木曽呂地区を対象に、市街化調整区域土地バンク制度を設けています。流通業務等施設の建設に関係する土地も登録対象に含まれています。
とはいえ、「安行ならどこでも倉庫を建てられる」という意味ではありません。
安行で倉庫を借りる場合は、倉庫そのものだけでなく、農地や緑地との関係、住宅地との距離、前面道路まで見ておいた方がいいです。
・安行神根地区、木曽呂地区のどちらに位置するか
・建物はどの用途で許可されているか
・大型車が住宅地を通らずに進入できるか
・敷地内で荷捌きや旋回ができるか
八潮市・三郷市
八潮市や三郷市は、都心方面や外環道、幹線道路へのアクセスを重視する会社が倉庫を探すとき、候補に入りやすい地域です。
倉庫や工場がある一方で、住宅地や農地と事業用建物が混在している場所もあります。
三郷市の案内でも、市街化調整区域では、開発許可を受けた予定建築物以外の建築や利用に制限があることが説明されています。
つまり、募集図面に「倉庫」と書いてあるだけでは、借主の事業内容まで確認できたことにはなりません。
それと、この地域では水害も無視できません。
広くて賃料が手頃でも、荷物を置いたあとに浸水リスクがわかるようでは困ります。
・4トン車や大型車が実際に入れるか
・最後の数百メートルに狭い道路がないか
・敷地内にトラックの待機場所があるか
・倉庫の床が周辺道路より低くなっていないか
・浸水した場合に荷物をどこへ逃がすか
草加市東部・三郷寄りの地域
草加市でも、東側の地域には農地や住宅地と事業用建物が混在する場所があります。
このあたりの倉庫は、駅から近いかどうかよりも、物件までの道路が使いやすいかどうかの方が重要になることがあります。
図面に「大型車可」と書いてあっても、現地までの途中に狭い交差点があれば、毎日の配送では使いにくいですよね。
私は内見のとき、建物の中だけではなく、幹線道路から物件までのルートも確認するようにしています。
所沢市南永井周辺
所沢市南永井では、市街化調整区域にある貸倉庫が実際に募集されています。
この地域は、国道463号線や国道254号線、関越道の所沢インターチェンジへのアクセスを考えやすい場所です。
駅からは距離がありますが、車で働く人や、車両を使って配送する会社にとっては、駅距離がすべてではありません。
一方で、南永井周辺には農地や農業的な土地利用も残っています。
そのため、倉庫が建っているからといって、保管品や作業内容を自由に決められるわけではありません。
保管だけなのか、加工や製造をするのか、車両整備まで行うのか。ここで確認する内容が変わります。
・所沢ICや国道463号・254号までの走行ルート
・農地や住宅地を通過する車両動線
・建物の許可用途と借主の作業内容
・従業員の通勤手段
川越市・狭山市・圏央道周辺
川越市は市域が広く、同じ市内でも、農地が多い地域、住宅が集まる地域、倉庫や工場が見られる地域があります。
川越市では、一定の条件を満たす市街化調整区域に、流通業務施設や工業施設を立地できる産業系の基準が設けられています。
こうした制度があるため、調整区域の中に倉庫や工場が存在する理由を説明しやすい地域です。
ただし、川越市ならどこでも同じというわけではありません。
狭山市周辺には茶畑や農地が残る地域もあります。圏央道に近いからといって、そこがすぐ物流倉庫向きになるわけではありません。
農地との関係、道路幅、車両の通行、周辺の環境まで見て、初めてその物件が事業に合うか判断できます。
⚠️ 「倉庫があるから借りられる」と考えてはいけない理由
市街化調整区域の倉庫を借りるときは、次の3つを分けて考えます。
2.倉庫として使える
3.借主の事業内容で使い続けられる
この3つは、似ていますが同じではありません。
例えば、保管だけなら問題がなくても、商品の加工や製造、車両整備、店舗営業を始めると、別の確認が必要になる場合があります。
倉庫の一部を事務所として使う場合や、敷地内にプレハブやコンテナを置く場合も同じです。
「前の会社が使っていたから大丈夫でしょう」と言われることもありますが、前の会社と今度の借主では、業種も作業内容も違います。
ここを曖昧にしたまま契約するのは、やはり避けたいところです。
🔍 契約前に確認する項目
市街化調整区域の倉庫は、賃料や面積だけを見て決めると、あとから確認事項が出てくることがあります。
内見や契約前に、次の内容を整理しておきましょう。
・建物が建築された時期
・建築確認や開発許可の有無
・許可された建物用途
・借主の業種、保管品、作業内容
・用途変更や追加の許可が必要か
・前面道路と大型車の進入ルート
・荷捌き、旋回、駐車スペース
・電気容量、給排水、消防設備
・浸水想定区域と倉庫床の高さ
貸主と借主が納得していても、それだけで都市計画法や建築基準法の確認が不要になるわけではありません。
最終的な取り扱いは、物件所在地の自治体や関係部署に確認する必要があります。
✅ まとめ:調整区域の倉庫は「使い続けられるか」で選ぶ
埼玉県の市街化調整区域に倉庫がある理由は、地域と建物によって違います。
区域指定前から建っていた倉庫、農業用倉庫、許可を受けた事業用施設、既存建物を利用した倉庫など、いろいろなケースがあります。
川口市安行、八潮市・三郷市、草加市東部、所沢市南永井、川越市、狭山市では、道路事情や農地との関係、倉庫の使われ方がそれぞれ違います。
だから、物件情報に「市街化調整区域」と書いてあるだけで、良い・悪いを判断することはできません。
安く借りられるかより、その倉庫で自社の事業を続けられるか。
私は、ここを一番大事にして物件を見るようにしています。
用途、保管品、車両、荷捌き、周辺環境まで確認しながら物件をご案内します。
・埼玉県:市街化区域・市街化調整区域
・埼玉県:開発許可制度の解説
・川口市:市街化調整区域土地バンク制度
・三郷市:開発許可等について
・川越市:都市計画法第34条第12号(産業系12号)

この記事を書いた人 池田(宅地建物取引士)
不動産取引の仕事は20年以上。倉庫・工場の仲介と検索サイト「貸倉庫東京R」の運営をしています。お電話いただければ、ほぼ私が対応させていただきます。東京、埼玉、神奈川、千葉、茨城、群馬の倉庫や工場のことなら、お気軽にご相談ください。























